ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年3月10日◆月の私は太陽を目指す

ミイさんが「今日はいつもより早く帰るよ」と出掛けていって、私はそのことを手帳に書き損ねていたようで、過去のぽかのお陰で朝から一つ得をした気分である。早く帰ってきておくれね。

 

昨日のことを思い出し、ふわふわとした心地で一日過ごす。それは嬉しさと疲れが綯い交ぜになっていて、足元がしっかり踏ん張れないというか、少し頼りなげな感じでもある。駄目になりそうなブロッコリーと冷凍ご飯で、簡単炒飯もどきを作る。フライパンにご飯を押し付けて少しおこげっぽくする。味覇とマヨネーズが案外合って美味しい。近頃、昼間の眠気に耐えきれない日が続いておりしっかりと昼寝をしてしまう。以前よりも活動的であることの証左だと考えると悪くないが、夜中に何遍も起きてその度に不安を直視するのは割にしんどい。

 

ミイさんが早くに帰ってきて、味噌汁を作ってくれると言うのでえいやと体を起こし交代する。ミイさんはお風呂で疲れを流しておいでよ。紫人参が余っていたのでそれを味噌汁にするが、笑ってしまうほど綺麗に発色した紫色の味噌汁が出来上がる。魔女のスープ、あるいはゼルダBotWのマモノスープ。ヒッヒッヒ……と言いながら椀によそう。これを食べると元気が出るよ……。

 

『Cyber​​punk: Edgerunners』を観終え、『UNDERTALE』の実況動画の新着を確認する。コーヒーを淹れ、バニラアイスに母からもらったキャラメルソースを垂らす。黄色いチューリップはこの暖かさでだんだんと開いてきて、ミイさんとそれを確認して嬉しいねえと話す。ミイさんに疲れの色が見える気がして大袈裟に心配してしまう。あまり良いことではないと分かっていても、どうしても態度に現れてしまう自分が憎い。私も月ではなく、小さくていいから太陽になりたい。

 

夜中に何度も起き、その度にミイさんの寝息を聞きながら目を瞑る。花粉で鼻がぐずぐずしているのだろう、少し鼾のようでもあるその寝息は一定のゆったりとした速度を守って続いている。私が私としてあるためには、月ではなく太陽であるためには、どうしたらよいだろう。