ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年4月3日◆アラームをかけないで昼寝

怒涛の外出ラッシュを終え、久しぶりに一日家に籠る今日。ミイさんと一緒にゴミ出しをしてお見送りを終え、洗濯物をじゃんじゃか干して、オリーブをベランダに出して水をあげる。水をやった後だんだんとひんやりしてくる鉢が好きで、しばらく手を当ててじっとしている。部屋に深く日が差し込む朝は嬉しくて、ダイニングチェアを窓際によいしょと運ぶ。

 

鉢の底からある程度水が流れたかな、とオリーブを窓際に入れる。日の差し込む窓際で、オリーブと福だるまと並んでダイニングチェアの上に丸まって読みかけの詩集を読む。音量を落として、音楽だって流してしまおう。たっぷりとした時間だ。私も一緒に植物になったような心地で、むくむくと静かに、しかし確かに活力が体の中に芽生えるのを感じる。人間だって光合成をしているのである。日が高くなって、伸びをして、眠たくなって、明るい部屋の中布団に潜る。今日は久しぶりに、アラームをかけないで昼寝をしてしまおう。

 

深い眠りに落ちる前、うとうとしている間にいくつか連絡が来ているのを働いていない頭で見る。起きたら一つずつお返事をしますゆえ。ぐっと寝てぱちっと起きた頭はすっきりして体は軽く、とりあえず遅めの昼食にうどんを作る。今日は小松菜に老干媽と西京味噌のうどん。大学時代、ミイさんと一緒に大学近くの中華系スーパーで買っていた老干媽だが、やはり辛味だけでなく旨味がふんだんに感じられて美味しい。またまとめ買いしておかなければ。西京味噌は元々里芋の味噌汁に使うのが自分の中での定番だったが、最近何にでもほいと入れるだけで優しい甘さと旨味が足されて味の円みが増すことに気が付き、なおさら好きになった。

 

うどんを食べつつ、先月の勤務報告書を提出したり、両親の衣装レンタルの申込用紙の記入をしたり、プランナーさんからのメールを確認したりする。うどんを食べ終わって、先生からのLINEに返事をする。先生こんにちは。私、先生に対してはこれからもずっと今まで通り名乗るのをやめません。呼び方を変えたのが先生の優しさや気遣いだと分かっていても、それでも、やめません。先生、私の胸の内に積もるこれは何でしょう。ご飯ご一緒するの、楽しみにしています。楽しみにしています。今日やろうと思っていたことが一つずつ終わっていくのは嬉しい。やることリストにチェックがどんどん入り、後ろに少しずつできていく自由時間でさて何をしようか。何か有意義なことをして過ごす、というのはなかなか難しく、しかしながら、無為に時を過ごすというのもまた私にとって有意義であるので結局何をしても良いのか。たっぷりとした時間の中、HPとMPを回復させて、明日からもまたふっくらと上向きに過ごしたい。

 

夕方、郵便受けを確認すると、京都の茶舗から新茶の知らせが届いていた。ミイさんと京都旅行に行った際に立ち寄ったのだった。新緑の季節が近づいている。季節の便りとしての新茶の知らせ、初めて受け取ったけれどあまりに素敵だな。新鮮な気持ちで、季節の移ろいを嬉しいと思う。あとひと月ほどで出来上がるという新茶、先生に贈ろう。

 

ミイさんが普段よりも早く帰ってきて、帰宅早々、刺身と日本酒で仕事の労を労う。ミイさんが笑顔で嬉しい。今日の刺身はスズキが特に美味しかった。コリコリと筋肉を感じる食感に程よい脂で酒が進む。最近は私がバタバタしてしまっていて、ゆっくりと言葉を探して話す時間をあまり作れていなかったね。ごめん。しらすの沖漬けを出してきて、新しく酒を開けて、ミイさんが最近聴いている音楽を流してもらいながら話をする。ぽつぽつと時間をかけて言葉を紡いで話す時間を作ることができてよかった。互いを尊重する気持ち、いつも忘れてはいけないね。最近はミイさんの優しさに少し甘えすぎていた。

 

昨日お義母さんが持たせてくれたクッキーを出して、コーヒーを淹れる。ミイさんはいつも私の淹れたコーヒーを美味しい美味しいと言って飲んでくれて、褒められるとにょきにょき伸びる私は、それじゃあ私がコーヒーを淹れようか、と自ずから言える日が増えた。回数を重ねると少しずつ安定してきて、仄かな自信が薄く薄く育っていく。コーヒー、今日も私が淹れてもいいかな。時折舌に触る塩が美味しいサクサクのバタークッキー、冷めても美味しくて嬉しいコーヒー、ミイさんの隣で書く日記。

 

明日からミイさんは二連休。どこかに足を伸ばすのもいいし、窓際に並んで座ってのんびりするのもいい。明日起きたら考えよう。パワプロの世界では甲子園にまで卒業生の八百屋さんがやってきていて、おおっと一塁から野菜が!これは大根ですねえ。と実況するミイさんに声を出して笑ってしまう。笑い声の中、何気ない今日が終わっていく。ああよかった。めでたしめでたし。