ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年4月10日◆シャボン玉をエンタメに分類する

結局、昨日は軽い昼寝のつもりがしっかりと夕寝をしてしまい、玄関のチャイムが鳴る音に叩き起こされた。ハッと目を開けると部屋の中はもう暗くて、瞬時にすべてを理解した体が勝手に玄関へ走る。ミイさんごめん、おかえりなさい、今日もやってしまった、ごめん。……偶に、予定よりも寝過ぎてしまって、内鍵を開ける前にミイさんが帰ってくる時間になってしまうことがある。寝る前に開けておけばいい、と思わないでもないが、内鍵を開けておくのはどうしても不安だ。目覚まし時計のアラームをセットする、アラームが鳴ったらばちっと起き上がる、何度目か分からない、次こそは。

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2023年4月9日◆日記を書いて読む、みんな同じだと知る

坂を上ってゆくミイさんを見送って、今日は朝寝に戻らず私もそそくさと外出の準備をする。日記屋月日さんが主催する日記祭の当日。今日を体調良く迎えられて良かった。シャワーを浴びて、髪を乾かして歯を磨いて、化粧をして髪を結う。気合いを入れた日ほど化粧は上手くいかなくて、こういう日にマスクが頼りになってしまうこと、少し寂しい。きつく結った片寄せ三つ編みをほぐすのも何だか思うようにいかなくて、二回やり直した。『マスカラまつげ』だ。

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2023年4月7日◆千切れるような強風、苺の豆花風

空気が千切れてそこから血が出るんじゃないかと思うほどの強風。一日中おもてはびゅうびゅうと鳴っていて、世界のすべてが飛んでなくなってしまいそうな突風が吹くたびに、肩を強張らせていた。和室の障子、その後ろに窓があると分かってはいても、怖いものは怖い。ガタガタドゴンと窓が震える音に、障子が外れてびゅうばたばたと飛んで消えて、果ては屋根もなくなってしまうのではないかという妄想に取り憑かれる。

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2023年4月6日◆古ぼけたかすみ草は桜に似て

栗饅頭があまりに美味なる菓子にて、ヤカに衝撃走る――!思わず私の作画は『ベルサイユのばら』調になり、白目を剝き背景にはいかずちが落ちる。饅頭の上に薄く乗った羊羹が特徴的で、柔らかな生地に包まれた白餡はまさに甘露の味わい。中心に御座します一粒栗も絶品で、何と言えばいいか、とにかくすっかり魅了されてしまった。聞けば、ミイさんの実家近くにある和洋菓子店の品なのだという。幼少の頃から慣れ親しんだ味がこの栗饅頭とは、いやはや恐るべし。

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2023年4月5日◆向かい合うのではなく横に並ぶ

起き抜けにコーヒーを飲む。今朝はミイさんが淹れてくれて、素敵な休日の朝だ。そう、素敵な休日の朝なのだが、そこには真面目な顔をして静かにコーヒーを啜る二人がいた。何もギクシャクしているわけではない。昨日外出先で飲んだコーヒーがとてもクリーンな味わいで、これがクリーンか!と刺激を受けた私たちは、はて、では我々のコーヒーの味わいはどうなんだ、といつもより注意深く味わっているのだった。

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