ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年2月27日◆長寝に落ち込まない

昼過ぎまで長寝をしていた。長寝、惰眠、朝寝……。『日本語シソーラス第二版』からジャンプして類語を眺めていると、『明鏡国語辞典第三版』の「朝寝」の用例に「朝寝を楽しむ」とある。編者や編集委員の先生方にもそんな日があるのかなと想像し、少し可笑しいような救われるような気持ちになる。

 

二人してのそのそ起きだし、ミイさんが買い出しに行ってくれる。私はちょこまかと家の掃除をしよう。掃除機をかけながら、長寝に落ち込んでいない自分に気付く。今までだったら、休日を半分潰してしまったと間違いなく肩を落とす場面だ。何故だろうかと考える。たぶん、一つはミイさんが新しい職場になって休日も時間も増えたから。そして何より、私が以前よりも元気になったから。いやに敏感で自罰的なアンテナが鈍ってきたのだ。

 

買い物から戻ったミイさんに嬉々として話す。ミイさんもそういえば、といったふうで「ヤカさん落ち込んでない!すごい!」と一緒になってわいわいと喜んでくれる。嬉しくてたまらない。元気があれば何でもできる。私はあの言葉を、実は結構信じている。

 

今日は久しぶりにホットケーキを焼いた。昨日から食べたいなと思っていたところに、ミイさんがホットケーキ食べたくて、と呟く。偶々同じことを考えているというのは、何度経験してもとびきり楽しい。牛乳と卵、さらにヨーグルトとバニラアイスを混ぜ込んだ生地を蒸し焼きにする。ふっくらと焼きあがった四枚を塔にして、バターとアイスを乗せてアールグレイ入りのホイップクリームを添える。最後にメープルシロップをかけたら完成。ミイさんがコーヒーを淹れてくれて、ホットケーキの甘い匂いと混じって部屋が喫茶店の匂いになる。ホットケーキはもっちりとしていながらも軽く、コーヒーはいつも以上にいい香りで穏やかな口当たりだ。なんと贅沢な休日であろうか。

 

少し調子に乗って、週末にライブの予定を入れる。一人で遊びに出掛ける、ましてやライブなんていつぶりだろうか。浮かれすぎかなと若干尻込みする私に、「これまでしんどかった分のご褒美が来てるんだよ」とミイさん。ミイさんは、私が感じている要らない罪悪感を取り除く天才である。ハナレグミの弾き語りツアー、どう考えたって楽しみだ。 

 

嬉しかったり楽しかったりしたことを忘れたくなくて、ついくどい文章を書いてしまう。まあ、忘れないために書いているのだからいいか。ミイさんが豚バラブロックを買ってきて、「アーニャ角煮が食べたいな~」とゆらゆらしながらこちらをちらと見ている。明日あたり、久しぶりに豚の角煮を作ろう。