ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年2月28日◆春宵にほうれん草のキッシュ

「明日も朝起きたらパーティーしよう」とミイさんに言われ、何をしよう、やったやったと喜んでいたら目覚ましアラームが鳴った。ここ最近で一番愉快な夢を見た。

 

足取りも軽くゴミ出しに向かう。外はすっかり春の空気で、そよ風が暖かい。こういうのを和風と呼ぶのだろうか。洗濯を回し、ミイさんと昨日配信されたポケモンデイを見る。ゼロの秘宝、今から待ち遠しい。ミロカロスが追加になるという情報も嬉しい。ミイさんを送り出し、上がった洗濯物を干してベランダに出す。カーテンを開けると、日がまっすぐに差し込んできて気持ちがいい。風が強くなってきた。ひゅるひゅるいう風音の中、少し日向ぼっこをする。

 

瞬きをする間に、太陽は東から西へと場所を変えている。あっという間の昼中。

 

ここ数日、あちこちでほうれん草のキッシュの話を見聞きして、すっかりキッシュの口になっている。幸い美味しいほうれん草は手元にあるので、初めてキッシュを作ってみようと思い立つ。冷凍のパイ生地を求めて、散歩がてらスーパーへ。傾きはじめた日が眩しくて視界は白く瞬き、半分目を閉じる。ぽかぽか陽気に防災無線のチャイム。喉の奥が痒くてくしゃみが止まらない。ついこの間まで冬の顔をしていると思ったら、うかうかしているうちに春が漂っている。それ以上に、花粉が飛んでいる。目も痒い。

 

パイ生地を解凍して、フライパンの大きさに合わせて麺棒で伸ばす。キッシュは食卓に並ぶと何となく特別な気分がしていたが、作っている時まで特別に感じる料理だとは知らなかった。少しウキウキしてままごと遊びの気分で台所に立つ。卵液の量を見誤って、パイ生地が膨らむにつれて蓋にぐるりと接してしまった。味には影響しないから良しとする。次回への覚書として残そう。極弱火でとろとろじっくり焼いている間、バターの甘い匂いが布団にまで届いてくる。

 

ミイさんから帰りが遅くなると連絡が入る。ぬっくりとした春の宵に、ほうれん草のキッシュを頬張る。