ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

音楽

初めて買ったCDは、St.Petersburg Cello Ensemble『Polovtsian Dances - Russian Symphonic Cello』だった。中学時代、吹奏楽部でオーボエを担当していた私は、『韃靼人の踊り』のオーボエソロに強烈な憧れを抱いていた。

 

初めて自分のお小遣いで買うCDに昂っていた私だったが、当時はこれがチェロアンサンブルのCDであることに気付いていなかった。再生ボタンを押して初めて、菅楽器の音がまったくしないことに驚いたのだった。しかし一方で、すっかりお気に入りの一枚になって一日中聴く日々を過ごしたし、このCDをきっかけに好きになった楽曲がいくつもあった。オーボエの演奏は宮本文昭氏を尊敬しており、何枚も買った当時のCDは今も時折聴いている。

 

最近は専らSpotifyの毎日で、家にいる時間が長い私は、いつもミイさん所有のアンプに繋いで音楽を聴いている。私にとっては十分すぎる環境だ。CDを買うという行為は、いつの間にか私の中でコレクション的意味合いが増した。特別好きなアーティストや好きなゲーム音楽サウンドトラックなど、モノとして手元にあって嬉しいという気持ちが大きい。

 

Spotifyに籠ってまだ知らない好きな曲を探す。深い森の中に分け入って、気になった木の実や果実を選んで背負った籠に拾う。帰ってきたら改めて吟味して、さらに選り分ける。こうしてプレイリストを少しずつ育てる時間が楽しい。しかし、これが結構体力のいることで、時間がたっぷりあって、さらに自分が元気な時でないとなかなか捗らない。

 

普段は、数年かけて少しずつ積み重ねた、地層のようなプレイリストを聴いている。再生時間が丸一日を超えるプレイリストはシャッフル再生で久しぶりに掘り起こされる曲も多く、新鮮さのような気持ちはこれで十分ある。私はどうやら、新しいものを広く深く精力的に探すよりも、既に掌の中にある好きなものをしみじみ好きだなと改めて確認して満足するほうが性に合っているらしい。誰と比べるわけでもないのだから、その掌がどんなに小さくてもよいのだ。この中には私の好きなものしかないという安心感。少し疲れている私は、安全な場所を求めている。

 

ヤカの掌プレイリスト。

 

何やらまとまりのない文章になってしまった。今年は音楽を聴き探す時間を増やしたい。それから、一人、あるいはミイさんと二人、生で音楽を聴く体験をしたい。心の底にはいつもオーボエをまた吹きたいという思いがあるが、これは実現できるだろうか。貪欲な希望もここに書き記しておく。これからも、いい音楽と共に。