ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年2月17日◆台所に立つ、山のように食べる

「店員さーん、すみません顰蹙を一つ。」「失礼ですがお客様、もうお持ちでございますよ。」買い出しに出かけて三秒後、顰蹙を買っちゃーうとマスクを取りに帰ってきたミイさんとの一コマ。

 

昨日職場の人と飲んできたミイさんはまだ寝ている。私はゴミ出しのため一足先に起きるが、冷える朝だ。いつだったか祖母が仕立ててくれた半纏を羽織って、台所に立つ。何か温まるものが食べたい。オリーブ油でベーコンを炒め、湯を注ぎ塩と醤油で味を調える。ミイさんがのそのそ起きてくる。菜花を入れてさっと火を通したら、簡単なスープの出来上がり。

 

なんだか山のように作って山のように食べたい日だ。ミイさんが買い出しへ行ってくれている間、私はお米を研いで、久しぶりに使うホームベーカリーの説明書を引き出しの奥から引っ張り出す。

 

ミイさんがスパイスカレーを作ってくれている脇で、私はパネトーネを焼く、焼くのは私ではなくてホームベーカリーだけれど。材料を測って電源を入れ、タイミングを見てラム酒漬けにしたドライフルーツと砕いたクルミを投入する。生地が少しずつひとまとまりになって、それから膨らんでいくのを小窓から見守る。恩師がお祝いに贈ってくれたホームベーカリー、新居で初めて使うことができた。

 

昼食にスパイスカレーを食べて、一息つく。ミイさんがまた台所に立ったと思ったら、今度は春キャベツと桜エビのミルクスープを作ってくれた。寒い日はとにかくスープが美味しい。休日のミイさんとだらだらのんびり一緒に食べるともっと美味しい。春キャベツは柔らかくて甘い。

 

お風呂から上がると、パネトーネが焼けている。キッチンにこんがり小麦の匂いが満ちる。ミイさんがホイップクリームを立ててくれる。コーヒーは私が淹れよう。ドリップポットに移した湯がどんどん冷めていき少し驚く。寒いね。近頃は使い慣れたドリッパーをお休みして、ミイさんが使っているドリッパーを借りて練習している。今日は結構美味しくはいったんじゃないか(「淹った」と漢字を当てたくなる)。パネトーネにホイップクリームを乗せてシナモンを振りかけて、コーヒーと頬張る。ふわふわで甘くて、優しい。ふー、今日も美味しい一日だった。ごちそうさまでした、そしておやすみなさい。

 

レシートを整理していて、釜揚げしらすの存在に気付く。これは。明日は春菊としらすのチヂミを作って帰りを待とう。