ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

本棚

先月、天井まで届く大きな本棚を作った。いわゆるDIYは得意としないが好きではあって、ホームセンターでツーバイ材やら金具やらをわんさと注文したのだった。

 

旧居でも同じように本棚を作っていて、引っ越しの際に柱と棚にばらして持ってきていた。今回はそこへさらに柱と棚を足して、前よりも大きな本棚を作ろうと思い立ったのだ。壁一面の本棚があると、やはりミイさんと私の家という感じがする。

 

新しい柱と棚には色付きワックスを施して、乾燥したら金具を使ってそれぞれ形にしていく。旧居からの柱は少し高さが足りないので、ジョイント金具で天井に突っ張れるようにする。柱や棚、それぞれのパーツを形にする作業は地道だが結構楽しい。ワックスによって表情が出てきた木目を見ながら、どの木材を顔にしようか考えつつパーツを作っていく。

 

完成したパーツを組み立てて、本棚が出来上がっていく過程はもっと楽しい。作業中はいつもVulfpeckのライブ音源を流して、久しぶりに活躍の場を得た電動ドライバーに力を籠める。Vulfpeckは純な楽しさを放っていて好きだ。元気を外から与えてくれるのではなく、内から湧き出させてくれるのだからすごい。帰宅したミイさんも進捗があるたびに喜んだ顔を見せてくれるので、ついつい作業ペースが上がる。作業期間はおそらく一週間くらいだろうか。筋肉痛を押して作業を続けたので、本棚の完成と引き換えに私の活動は一時停止を余儀なくされた。旧居からの柱に、以前の棚の跡が見えるのが非常に愛おしい。

 

さて、本棚が完成したら引っ越し荷物の段ボールを開け、本を並べていく。埃をはたきながら一冊一冊本棚に収めていく自分の姿に、小さな書店の店主にでもなったかのような気になる。お供のプレイリストは、「お粥」と名付けた静かなものに変えた。我が家の蔵書のおよそ半分は、私が少しずつ集めている国語辞典を主とした辞典類。残りの半分は、食に関するものや映画・演劇に関するもの、エッセイに小説、漫画に絵本と、二人いるだけあってまあ様々だ。ミイさん文庫の中に気になる本を見つける。面置きする絵本は、石黒亜矢子さんの『九つの星』にした。

 

棚を賑やかすのは本だけではない。こちらはミイさんコレクションのお酒、とりわけハードリカーたち。エチケットが小洒落ていたり美しかったりするものが多く、今回こうしてディスプレイする場所を作れて大満足である。分からないなりに、ちょっと特別そうなものを手前に陳列する。後にもらったミイさんからの評価はばっちりだった。前に比べたら、少しだけ分かるようになったということかな。一緒に美味しいお酒を楽しめるのも、これまた贅沢な暮らしである。ここに、アンプとスピーカー、テレビを設置して遂に本棚は完成。もはや本棚ではない。

 

移ろう生活を引き継ぎ、確かに見守ってくれる存在のなんと心強いこと。これから、時折面置きする絵本を取り換えるのが楽しみだ。