ヤカの散録

忘れてしまうあの日のひだ

2023年2月14日◆ちょっとした凹み

母から連絡があり、野菜を仕入れるため実家の最寄り駅へ向かう。

 

時折顔を出す畑におじさんの姿がなかったのは残念だが、他の直売所をいくつか回れたので満足だ。春菊はまたサラダやチヂミにしよう。紫カリフラワーとロマネスコはグラタンにしようか。今回は立派な小松菜と菜花が手に入ったのもうれしい。元気な野菜でいっぱいになっている野菜室を前にすると、いつもより台所へ立てる日が増える。

 

数日前まで体調が芳しくなかったことが引き金となったのか、やっぱりどうしていまいち調子の出ない一日。最近は満点を優に超えるような毎日を過ごしてしまっており、この下り坂の気配に私は敏感だった。また、光が差さないところまで坂を転がり落ちてしまったらどうしよう。

 

まだ仕事中のミイさんに「今日は駄目です」と連絡し、罪滅ぼしのようにここへ来る。ミイさんが帰宅し、作り損ねていたあんこう鍋の支度をしてくれる。湯船にお湯を張って、お風呂に入る。体が温まると強張っていた気持ちが少しマシになって、そんなところへミイさんがちょっかいをかけてきて、もっと大丈夫になる。ミイさん作のあんこう鍋を二人で囲んで、弟から届いた新酒を傾ける。「ミイさんと美味しいもの食べたら元気が出てきたみたい」と伝えると、湯たんぽを用意していたミイさんも同じ言葉を返してくれた。

 

坂かと思った下りの傾きはすぐに上向いて、ちょっとした凹みに躓いただけで済んだ。ほっとして体が軽くなる。満点じゃなくていいから、穏やかな日をできるだけ。